2016年12月30日金曜日

ちょっとだけ〜2016年を振り返って(3)〜

ブックンロールオキナワ2016の期間中。
いろいろな人にお会いしましたが、とても印象に残った言葉をひとつだけ。

イベントにかかわってくださった方が、こんなことをおっしゃっていました。

「本屋のこと、あるいはそれに関わることに取り組んだり、情報を探したり、発信したりするのは、楽しくもあるけれどやっぱりすこし大変なこともある。だけど、本屋のことをほっといても取り上げてくれる時代じゃない。ほかの誰かがやってくれるわけでもない。だから、毎日毎日、ちょっとだけ無理して、頑張って、本と本屋に関わり続けている」

2016年、ブックパーリー・ブックンロールオキナワ、そして仕事の中でも、「日々ちょっとだけ無理をして頑張っている人」をたくさん見ました。

自分のことも顧みてですが。
無理をしない方が本当はいいのかもしれませんし、見合うだけの利益があったかどうか、結論をすぐに出すのは難しいでしょう。かといって私は、その「無理」を否定することは簡単にはできないなぁ、と思っています(全肯定もできないですが)。

たぶん、その中に、生きるということのなんらかがあるような気がしています。

そんなことで今年の振り返り記事は終わります。また来年も、本の周り、そしてブックンロールオキナワ2017でお目にかかれますよう。

2016年12月21日水曜日

今年はこんな本を作りました〜2016年を振り返って(2)〜

閑話休題。
イベントとバンドのことから離れて、2016年に手がけた本を紹介したいと思います。「2016年を振り返って」であれば、もちろん触れなきゃですよね。

■ ■ ■

沖縄の出版社は、自分たちが作った本のことを「沖縄県産本」と呼んでいます。空犬太郎さんのブログにもありましたが、本屋さんには必ずといっていいほど県産本の棚が設けられていますので、県産本が手元にあるという方も多いのではと思います(多いといいな)。

流通や支払いの一本化を目的として、出版社と本屋さんとのあいだには「取次会社」が入るのが一般的です。出版社は、本を取次会社に出荷した時点でその分の支払いを受け取りますが、返品があったら返金するという仕組み。取次会社は全国各地の書店さんに入荷本を配本したり、注文を受けて発送したりします。
これは県外での話。

沖縄の出版社の場合は、県内の本屋さんがメインの売り場ですから、距離が近いこともあって、大手取次会社を通さずに自分たちで納品するところが多いです。本を納品した時点ですぐ支払いが立つのではなく、店頭で売れた数をカウントしてその分だけを精算します。コツコツと面倒に映るかもしれませんが、大金を回転させずに実売ベースの小商いをすることで、小さな出版社でも取引ができるわけです。県内での流通をどこかに外注する場合であっても、大手ではなく地元にある取次会社に委託するのがほとんど。

県産本の9割ほどが地元で売れる背景にはこうした事情があります。いや、もともと地元を志向して本を作っているからそういう売り方が合っているのか、「卵が先かニワトリが先か」ということかもしれませんが、ともあれ県産本の多くが地産地消的な売り方をしていることはお分かりいただけると思います。

もうひとつ言い添えますと。
読者が本を手にするまでには、出版社や本屋や流通会社だけではなく、さまざまな人が存在します。印刷会社・編集・デザイン会社・古書店・小売店・図書館……。

日本全体の「100分の1市場」なんて言われる沖縄でのことです。出版王国・沖縄を支えているのは、あまり目立たないかもしれない、本の回りの人たち。もちろん、著者の存在も大きいですし、何よりも本を買ってくれる読者あってのこと。

■ ■ ■

で、相変わらず前置きが長いですが、今年わたしが作った「県産本」は以下の通りです(そのほか編集ものがいくつか)。デザインや印刷のクレジットもせっかくなので入れてみました。
どんな本を来年は作ることができるでしょうか。楽しみですね。


復活のアグー 琉球に生きる島豚の歴史と文化
平川宗隆著 カバーデザイン:佐渡山安博 印刷:でいご印刷

うたう星うたう
瑶いろは著 カバーデザイン:YES DESIGN ROOM 印刷:でいご印刷

沖縄のデザインマンホール図鑑
仲宗根幸男著 カバー・本文デザイン:仲田慎平 印刷:東洋企画印刷

尚円王は松金 妻はカマル
やまのはとしこ著 カバーデザイン:武富良実 印刷:でいご印刷

おうちでうちなーごはん!
はやかわゆきこ著 カバー・本文デザイン:渡慶次博 印刷:東洋企画印刷

詩集 恋はクスリ
鈴木小すみれ著 装画:今村雄太 カバーデザイン:YES DESIGN ROOM 印刷:でいご印刷

私のアパート経営〈失敗〉物語
仲村渠俊信著 カバー・本文デザイン:仲田慎平 印刷:東洋企画印刷

ダボハゼ〜人生逆転劇場〜
住川明彦・美恵著 カバーデザイン:佐渡山安博 印刷:でいご印刷

【近刊】
内地の歩き方 沖縄から県外に出るあなたが 知っておきたい23のオキテ
吉戸三貴著 カバーデザイン・本文イラスト:ぐりもじゃサスケ 印刷:東洋企画印刷



2016年12月19日月曜日

バンドやろうぜ!イベントやろうぜ!〜2016年を振り返って(1)〜

長らく更新ができていなかった本ブログ。
年の瀬も押し迫ってきましたので、ここで、今さらながらイベントを振り返ってみたいと思います。

「沖縄でもブックンロールをやろう!」と、わたしが本格的に動き出したのが2016年の年明け頃でした。それまでは私一人の脳内だけにある、空想というか夢想というか、ほとんど妄想に近いものでしかなかったのですが、大きなきっかけとなったのが酒の席でした(こればっかり)。ボーダーインクの飲み会に来てくださったリブロの筒井さんに、「これこれこういうことで、バンドやりませんか?」とお声をかけたら、即答で「やりましょう。ベース、転勤のときに持って来てます」と快諾をいただいたのです。











余談ですが、その飲み会では、むぎ(猫)ちゃんにライブをしてもらいました。




ギターとベースが揃い、そこにボーカルも加わって、3人で初めて練習スタジオに集まったのが5月のこと。ベースと歌にはなんの心配もありませんでしたが、わたし自身は借り物のエレキと中古のエフェクターに慣れるので精一杯。よくライブの場に立ったなぁと、(今さらながら)(我ながら)思っています……。

ライブの部の練習はこうして動きだし、さらに、大事な「トークの部」の準備もスタートしました。「書店員さんに出ていただいて、それぞれの店の“顔が見える”イベントにしたい」と思ってのことでしたが、人選や出演交渉にはかなりの苦労がありました。

でもそこから見えてきたものが、実は、わたし自身がブックンロールで得た最大のものだと思っています。この話は長くなるので、また何かの機会に。

■ ■ ■

さらに、脳内には野望がもうひとつ。
ブックンロールをやるなら、本家ブックンロール主催者である空犬太郎さんにもぜひゲストで来ていただきたい。せっかく来ていただくなら、たくさんの本屋さんを一緒に回りたいし、いろいろなブックイベントを見てほしい。

秋の沖縄を彩るブックイベント「ブックパーリー」。2013年・2014年と開催され、その認知度も徐々に上がっていましたが、2015年は諸事情あって開催されず。このままフェイドアウトするのはもったいないと思っていました。そんなこともあって、「一緒にブックパーリーOKINAWAやりませんか」と、本屋関係者のみなさんにお声掛けをしたのでした。

もちろん私の声掛けだけで動いたわけではないですよ。今年の実行委員会となったのが、ジュンク堂書店那覇店の森本店長、リブロリウボウブックセンターの筒井店長、「古書の店 言事堂」の宮城さん、「くじらブックス」の渡慶次さん、そして私の5人です。

パーリー開催に呼応して、県内の各所でイベントが実行されました。
ブックカフェ、書店・古書店さんのオリジナル企画、読み聞かせキャラバン、ミニシアターでの上映会、アウトドアでの読書イベント、モノレール車内での即興演劇、古本市などなど。

本の現場のみなさんが、時には別のジャンルも一緒になって個性的なブックイベントをつくりあげておられました。いや〜今年のパーリーは凄かった。全国各地でもブックイベントは盛んですが、それにも決してひけをとらない盛り上がりを見せたのです。

余談ですが、今年のパーリーの裏テーマは「コラボ」だったかなぁと思っています。
本と映画、本と演劇、本とアウトドア。
そして本とロック!

■ ■ ■

こうしたさまざまなイベントの情報のとりまとめ、フライヤー等の制作、マスコミ関係の告知、記者会見、広告代理店さんとのやりとりなど、やるべき仕事は膨大にありました。さらに、実行委員それぞれがイベントを主催したり、どこかに出演したりということも。もちろん通常業務の合間にです。

ブックパーリーの実行委員長を務められた森本さんが何度もおっしゃっていて、今年のテーマにもなった「本は人生を変える」という言葉。

本に関わる皆さん、それぞれで、本に対する思いは異なりますが、「本は人生を変えるからこそ、誰かが、いろんな本に出会えるきっかけをたくさんつくりたい」という思いが、ブックパーリー運営の通奏低音としてあったことでしょう。

これは本の現場だけではないですが、イベントをやるメリットとは何でしょう。大きな利益を出すというのは本当に難しく、本の売上そのものにつなげるのも、また難しいこと。理念だけではうまくいかないし、個々人の努力だけに頼ったものも長く続けられない。

こうした問題には、私自身、まだ答えを持っていませんが、答えに向かって進んでいるような気はしています。

歩いていったその先でしか見えないものが、世の中にはある。

そんなことで、いよいよ動き出したブックンロール+ブックパーリー。
長くなったので、続きはまた次回の更新で。