前回の更新の続きとなる「韓国リポート」記事の下回です。
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東アジア出版人会議のために韓国を訪れた。
ソウルは大都市だ。片側四車線のまっすぐな道路と高層ビル、地下鉄やショッピングモール。ここが東京だと言われても違和感がないのは、東アジアにおける近代化が均質的ということかもしれない。
だけど大通りから一歩入ると、マチヤグヮーにそっくりな商店に出くわしたりする。
だけど大通りから一歩入ると、マチヤグヮーにそっくりな商店に出くわしたりする。
くねくねと路地を進んでたどりついた小さな市場。
肉や野菜、乾物に下着など、さまざまなお店が軒を連ねているところは、さながら牧志市場や農連市場みたいで、文化圏が同じということが腑に落ちるのだ。
韓国で訪れたかったのが、「坡州(パジュ)出版都市」だ。
48万坪の土地に出版社・印刷所・製本会社・デザイン事務所などが立ち並んでいる出版団地で、デザインが個性的な建物と豊かな自然が同居している。
パジュの中心となるアジア出版文化情報センター。
本にまつわる複合施設で、展示・情報サービス、本屋やブックカフェ、会議場なども備えている。
子どもたちが思い思いに本を読んでいる。高校生が自主イベントを開いている。未来は明るい。
本にまつわる複合施設で、展示・情報サービス、本屋やブックカフェ、会議場なども備えている。
子どもたちが思い思いに本を読んでいる。高校生が自主イベントを開いている。未来は明るい。
街なかのハングルは読めないけれどずっと眺めていたくなる。
滞在しているあいだは韓国の皆さんがすべてをサポートしてくれて、困ることがひとつもなかった。
街も歴史も、人も美しい国だ。
東アジア出版人会議における「第六の地域」として沖縄が選ばれたのは、この会議が十周年を迎える記念大会の候補地として名が挙がったのがきっかけだという。ここに「独自の出版文化の伝統と蓄積がある」ことが重視されたそうだ。
そして昨年十一月にひらかれた沖縄大会は総勢80人、5日間の日程が、なみなみならぬ事務局のご尽力で成功裏に終了した。
さらに発展して、宜野湾市にある古書店「榕樹書林」の武石代表が、アジアの優れた出版文化に贈られる「パジュ・ブックアワード」特別賞に輝いた。武石氏はその後、交流のある沖縄研究者らとともに、韓国にある富川(プチョン)の図書館へ沖縄本を贈呈していて、それに韓国で出版されている沖縄関連本を加えた資料館「沖縄館」もまもなくオープンだ。
「沖縄の本を翻訳出版したい」という声も挙がっており、私が編集した沖縄の家庭料理本も翻訳されることが決まった。
東アジア出版人会議によって生まれたこのコラボレーションがさらに発展していくかどうか、良くも悪くも未知数だ。課題も多い。沖縄と社会問題は共通していても、出版分野においては違いのほうが大きいだろう。
だが、会議のなかで何度も語られた、こんな言葉を思い出すのだ。
「出版人は、公平で、かつ既存のものとは違った信念を提供しなければならない。そして異なった立場の者にも意見提供の機会をつくらなければならない」
世相に暗雲がたれこめる中において、とりわけ切実に聞こえた。
それぞれが信念を持って出版に取り組むこと。そして相手の語りに耳を傾けること。
まずは、そこから始まるのだ。
悲しい歴史によって途切れてしまった書物交流が、沖縄からもふたたび始まっていく。
その新しい歴史を思うと、胸が熱くなっていく。
(初出:2017年6月28日付「琉球新報」文化面
「東アジア出版人会議」に参加して〈下〉)
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